エネルギーの賛美(詩)[537/1000]

天よ 雷霆を地に叩け

幸福に棲みつく暗い影を

情熱の底で嘲笑う無気力を

道徳の格を蝕む淫蕩を

悉く焼き尽くしてしまえ

 

海よ 嵐を連れて猛り狂え

苦悩に酔い痴れた放埓に

悪意に閉ざされた月光に

不幸に暴かれた運命に

断じて溺れるな

 

風よ 悲哀の季節を吹き破れ

燻る失意の向こう側へ

同情に託された克己へ

誇りに叩かれる精神へ

我らを鼓舞したまえ

 

***

 

どうも頭で詩をつくってしまうのは、己の海の深さが浅いゆえ、頭に頼らざるをえないからだろう。先日の、白紙になった詩作が悔しくて、何度も詩作を試みるが、言葉と言葉が流れていくというよりは、言葉と言葉が独立した石のように、ゴツゴツした粗が目立っている。海浜で両手ですくいあげた砂が、手からさらさらと流れ落ちるように、心に自然に流れ入り、感覚の交流を行うには、まだまだ己の人間が足らない。

日本の詩、とくに軍詩を朗読していると、日本という国がいかに言霊主義であったかがよく分かる。弱弱しい言葉は使わない。勇ましく、勢うための言葉だけが使われる。

私自身、厭世的になっていた時期が長いので、海に沈んでいる言葉は、苦悩や悪意を含んでいるものが多い。かつての日本の詩に触れると、欧米と戦ったあの軍人たちの鉄の心、鉄の心に流れる、人間の血の温かさを感じる。それを、彼らの海に見つけられた気がする。

いい詩に触れることは、己の海に、いい言葉を沈めることだ。これが、先祖の誇りを受け継ぐ生き方の礎である。

 

2023.12.9

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