現世を嫌う人間よ。[479/1000]
現世を嫌う人間も、永遠の一部を飾るのが、今日であるという事実からは目を背けることができない。凄惨な過去も華やかな過去も、はじめから歴史の一部を織りなしていたのではなく、不自由と不条理に抗争した人間たちの命の躍動によって産…
現世を嫌う人間も、永遠の一部を飾るのが、今日であるという事実からは目を背けることができない。凄惨な過去も華やかな過去も、はじめから歴史の一部を織りなしていたのではなく、不自由と不条理に抗争した人間たちの命の躍動によって産…
孤立と孤独の境目は、そこに天が存在しうるかである。同じように、旅行と旅との境目も、そこに天が存在しうるかだ。天のもとでは、命をさらけだすことが可能となる。旅にはいつも冒険が付きまとい、まるで命で風をきるような猛々しさがあ…
草枕月記では、孤独や孤立をテーマとして扱うことが多い。それは、私自身が孤立に苦しんだ人間であり、孤独に救いを見出す人間だからである。私はこれらの言葉の定義に、天や神といった信仰の存在をみつける。孤独な人間がなぜ孤独になる…
吉田松陰は、群を抜いた読書家であった。鎖国の中、アメリカの軍艦にまぎれ潜入を試みようとした罪で、野山獄に投獄されるも、その3年間のうちに読んだ書物は1500冊を超えていたという。これは、一か月あたり約40冊のペースにあた…
大分寒くなってきたが、ちゃんと暖はとっているか。ちゃんと湯船に浸かっているか。ちゃんと温かいものを食べてるか。 私のほうは最近、熱々の玄米がゆを食べることで、湯船に浸かるに匹敵するほどの熱量を獲得できること…
人生に「美」を見出さずにいられない人間は、その中心に「神」を据え、平坦な虚ろを貫いて猛々しく立ち上がることに憧れる。それが人間のみに与えられた宇宙の神秘だと信じるからである。そして、これこそが、意味のないと言われる虚ろな…
異常なほどの寂しさは、まっとうに人間をやっている証である。老いと死の風に無防備に晒されて、ただそこに、佇んでいるのである。凍えた魂を温めるのは、炎々と燃える太陽の役目だ。日没が寂しいのは、太陽が去ってしまうからである。夜…
人間という大きなものを継承して生きている。魂をそこなうよりは、肉体を十ぺん滅ぼす覚悟で生きた人間たちによって、欲望の地に埋没することなく、魂という財産は今日に受け継がれてきたのだ。書物を読めば、命懸けで魂を死守してきた人…
世間体を気にする親を疎ましがったことのある人間は少なくない。しかし、人様に恥ずかしくない生き方をするために己の襟を正したのが、名誉を重んじた日本人のやり方であった。魂が浮薄し、精神を失った今日では、世間体は沈殿した道徳の…
失ってはじめて大切なものだったと気づく。それが愛情であったのなら、なおさらのことである。突然の別れに気持ちの整理もつかぬまま、しかし、これでいいと本当は知っているのである。傷んだ心は放り出したまま、不器用に笑ってみせて、…