千夜を越えて。[1000/1000]
千日前、新潟の柿崎にある海にいた。二年に及ぶ無気力な衰弱状態をやっとの力で振りきり、カビの生えた部屋でずっと夢見た大海原に逃れてきたのである。オーストラリアをヒッチハイクで横断し、ゴールドコーストから朝日を望んで以来、虚…
千日前、新潟の柿崎にある海にいた。二年に及ぶ無気力な衰弱状態をやっとの力で振りきり、カビの生えた部屋でずっと夢見た大海原に逃れてきたのである。オーストラリアをヒッチハイクで横断し、ゴールドコーストから朝日を望んで以来、虚…
この千日を振り返れば、厭世主義に窶れきり、幸福を嘲ったこともあった。ヒューマニズムに呑まれた幸福を、救済する力も頭脳も持たぬ落ちぶれた私は、無力のまま不幸の元へ、悪意の渦に身を委ねるしかなかった。時代を嘆き、幸福を軽蔑し…
涙がわいてくる。私の少年時代を、殺ばつとした現在の私の生活の中によみがえらせようとしておられる。 * 赤飯の秋冷に思うあたたかさ、にしめの舌ざわり、一張羅の小さい妹たち、そして出店の笛の音。 笛や太鼓にさそわれて、 山の…
生れた時から今日まで私の上にそそがれた涙はどれほどであっただろうか、とても私では計りきれない。幼き時からお母さんの思い出を綴って見よう。私はよく医者へ連れてゆかれたものだった。父なきあとの貧乏暮らしであるのに、お前たちは…
甘いものを食べぬと決めてから、人生がすっかり変わってしまった。長年、散々に心を苦しめ、貶めつづけてきた悲壮の大地は、今や歓喜に取って代われた。悲しみの種、焦燥の種、怒りの種を植えなければ、心はどうして、自発的に自己を苦し…
前後型の中にも、五種と六種があって、肩に力が入ってくると、五種はワイワイするが、六種は陰気になっていく。陰気になってしようがないので、言葉でひき立てるつもりか、熱のある言葉を吐く。ある六種の人で、「七生死すとも整体協会の…
軍隊生活において私が苦痛としましたことの内で、私の感情―繊細な鋭敏な―が段々とすりへらされて、何物をも恐れないかわりに何物にも反応しないような状態に堕ちて行くのではないかという疑念ほど、私を憂鬱にしたものはありません。私…
ヤハウェと蛇の遭遇の後に起こるアダムとエバノ追放は、人間の堕落にほかならず、『新約聖書』のキリストの受難は人間の救済にほかならない。 (中略) 完全な陰の状態を新たな陽の活動へ移行させる衝動もしくは動機は、悪魔の神の世界…
甘いものを食わぬことにした。厳密には、巷で四毒と言われるような、小麦、植物油、乳製品を金輪際食わぬと決めた。それから数日、軽い頭痛とこれまでにない体臭が生じた。身体から毒が抜け始めた兆候とみる。体臭が生じたのには自分でも…
魂の修養を掲げて千日近く言葉を綴ってきたが、まさか最後の十日に及んで、願ってもなかった真理に辿り着けるとは。今日991日目をもって、最後の1%に突入することになる。きっとここまで踏ん張ってきた褒美として、神様が贈り物を下…