どんな人にも、大なり小なり波というものはあるであろうが、悪循環から抜け出せなくなるときほど苦しいものはない。気を弱くすると邪気が体内に入り込み、体を蝕み始める。大蛇の猛毒がゆっくりと全身をめぐるように、なんとなく気を緩めたところから、気づけば邪気が体を覆いつくし、どうも弱ってしまうことは、定期的に起きてしまう。
何をするにもやる気もおこらず、生産から離れて破壊を試みるようになる。破壊を試みるのは、破壊によって邪気を晴らそうとする人間に備え付けられた本能であるように感じる。しかし現実は、実際に破壊をするといっても、そういった”生産的な破壊”(という言葉も変であるが)ができることは稀であり、大体は惨めったらしく、自己をちまちまと傷つけるのである。ゆえに、悪循環におちいる時期というのは、邪気を晴らすのに時間がかかり、ちまちまとした微妙に嫌な感じが、じめじめと長くつづくのである。
そんなとき、繰り返し思い出すのが、中村天風先生の教えである。クンバハカという、究極の術があり、簡単にいえば、体に入り込む邪気を食い止めるものである。ケツの穴をキュッと締め、肩を落とし、下丹田に気を充実させる。これを一瞬のうちに行うことで、ケツの穴から気の流出を防ぎ、邪気を体内から追い出す転機をつくりだすのである。中村天風先生は、一日中ケツ穴を締めて生活していたというから、肉体の鍛錬とは、重ねれば驚く境地にまでたどりつくものである。
自分はできると、ほんのわずかな意志力を信じることだけが、肉体に思いもよらぬ力を与える。私は元来、体の不調に弱く、微熱もあれば何もできなくなるような弱い人間である。半年前にクンバハカを習ったとき、頭痛でフラフラのなか仕事をしなければならず、クンバハカを行った。画面越しにうつった自分の顔を見て、おどろくほど元気だったことにとても驚いた。この時、気さえあれば、体の不調は乗り越えられるのだと体験をとおして知ったのであった。
なにも根拠はいらず、百パーセント精神論である。どんなに暑くても、体調が優れなくても、ケツの穴を締め、肩を落とし、下丹田に集中し、大丈夫だと気を強く持てば、案外いけてしまうものである。逆に、自分は弱いと頭から決めつけて、ああこれはやばいと弱気になれば、何が起きても弱くなるのである。
まずはクンバハカで、ケツの穴をしっかり締めること。それから、ゆっくり深呼吸したら、気を意志に集中させ、意志力をもって苦しみを跳ね返していくのである。さあ、ぶつかっていくぞ!
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