自然から養われる情感こそ、日本人の魂に愛を供給していたのではなかろうか。[930/1000]

真っ白な雪が降っている。寒空のしたを風に運ばれて、真っ白な雪が大地を覆ってゆく。四季を感じる機会はずっと減ってしまったが、自然から養われる情感こそ、日本人の魂に愛を供給していたにちがいないと感じる。寒くとも、寒くとも、耐え忍ぶことを基本としたわれわれの先祖は、自然を克服しようと考えなかった。暑いのは嫌とか、寒いのは嫌とか、そんなことも感じたかもしれぬが、それ以前に、自然は己と一体であった。一体であるのだから、切り離して遠ざけることなど、考えもしなかった。

極端な話、ほんとうの意味で自然を取り戻せば、信仰は自ずと蘇る。家が進化し、衣類が進化し、それが難しいところまで来てしまったが。自然を詠んだ古典と歌を、忘れていくのは必然である。自然を忘れることは、太陽を忘れることでもある。花を忘れ、旅を忘れることでもある。

寒いのは苦しい。できることなら、温かく過ごしていたいと思うのは、普通の感覚である。それでも、つまらぬ意地のようなものが、凍えても耐え忍んでやりたいと往生際悪く、抗うのである。美しい雪が降りゆく様子を、ずっと眺めていたいと思うのである。

 

2024.1.6