己自身が一刀両断せねばならぬ問題[890/1000]

二つ二つの場にて早く死ぬ方に片付くばかりなり。図に当たらぬは犬死などというは上方風の打ち上がりたる武道なるべし。判断が迫られる場面は毎日のように訪れるが、他人の手に委ねてばかりいると、いつまで経っても判断力が身につかない。結局、死ぬか生きるかの二択で(実際に死ななくとも死の衝動に向かうものとして)死に向かえぬ己の弱さを直視できず、あなたは生きればいいと、誰かに言ってもらいたいだけだ。

現世の人間は優しい。死になさいと言う人間は稀である。生きればいいと、温かくそう言ってくれる。ゆえに、自己との対決に敗れれば、真っ先に他人に救いを求めたくなる。ほんとうは己自身が一刀両断せねばならぬ問題であることを知っているのに、他人の手に委ね、曖昧な形で丸く終わらせてしまう。

死に向かう覚悟がなければ、いつまでも一刀両断はできぬ。これまでの経験からも分かっているはずだ。生きるほうばかりに転んで、カッコ悪くしがみつくうちに、己の刃はこぼれ完全に断ち切る力を失ってしまうのだ。

二つ二つの場にて早く死ぬ方に片付くばかりなり。いま一度、己を戒める。食うか食わぬかで迷うなら食わぬこと。来たものは全部やる。力のあるほう、格好のいいほうへ。ちゃんと見極めること。どちらの力が本物か。

 

2024.11.26