人間の課題というものに、死んでみせようよ[876/1000]

尽きぬ悪意に気圧されると、金で安堵を得ようとする。そうして文明に堕落していく安逸を、どれほど恥じて、悔いるだろう。ハンス・カストルプは、無力のために煙草をふかし、力を得るのだと戯ける余裕をみせた。それが、弱い心を持つ人間の現実かもしれないが、どんな悪意にも屈しない、純粋な力の結晶のような存在に、どうやっても憧れるのだ。そのような存在こそ人物たりうるものであるし、恥じても悔いても、何度でも、そのような存在になることを諦めてはならん。金も名誉もどうだっていい。人間の課題というものに、死んでみせようよ。

 

2024.11.12