憶えておくことだ。おれたちの存在本質が熱である以上、愛であることを。[872/1000]

冬の訪れは、どうしてこうも怖いのだろう。だが、生きるために戦わねば。身体に燃えるちいさな火を絶やすことなく、薪をくべて燃やしあげねば。

まったく、愛するとは、己の熱を他人に差し出すことにちがいない。ちいさな炎は、別の炎の加勢によって、再び力を取り戻す。そうしておれたちは元気になる。熱を奪おうとする人間の悪意や、自然の不条理と戦い、己の存在本質である炎を、絶やすことなく燃やしている。無論、この炎に聖性を付与するものが信仰であることは言うまでもない。

 

心身が冷え切って、どうしようもなくなれば、自ら薪をくべるほかない。先日、父からもらったなけなしの金で、銭湯の回数券を買った。風呂はいい。小さく消えそうになる炎も、一発で勢いを取り戻す。死にそうになっても、風呂にいけば何とかなると思える。スーパーからもらってくる、新聞や段ボールにも救われる。燃やせば、小さく暖をとることができるし、ヤカンを置けば白湯を沸かすこともできる。

無論、人から与えてもらう愛情(熱)ほど、心を温めるものもない。心が冷えると自然と涙が出そうになるものだが、そんなときに親切にされると、ほんとうに泣き出してしまうのが人間の心の不思議である。まるで、氷が溶け出して流れ出すように、心は不思議なくらい温まるのである。

太陽がわれわれに与える愛の大きさは、もはや言葉にすることもできない。そして、憶えておくことだ。おれたちの存在本質もまた、熱である以上は愛であることを。

 

2024.11.8