去り行く神秘のあとを、いつまでも追っていけたらいいのに[860/1000]

澄明な朝を包む雲海

雲海からそびえ立つ富士の山

暖気が天に昇り 冷気が地に降り立つのは

大気をかき混ぜる 壮大な神の営み

神秘をやさしく温めるように

黄金の朝陽は世界を照らす

そうして去り行く神秘のあとを

いつまでも追っていけたらいいのに

 

なるほど、清里の澄明な朝に佇むと、街々の汚さはこのためにあるようだ。だが、清澄な朝に交じり込む存在は醜く、汚い街に込められた力は清らかだ。烈しくめぎ合う陰陽の海を、白面に黒点を付与する葉隠を、己のうちで性質を異にする傲慢を、傲慢のうちに秘められた無邪気を、雲海にそびえ立つ威風堂々たる富士の姿に、死なせてしまっても構わないとさえ思う。

 

2024.10.27