無限に交差する光芒のどこかで、おれたちは交わっているにすぎぬ。[845/1000]

哀しみが宇宙にこだまする。そのすぐ下を、ひとの笑いが颯爽と駆け抜ける。他愛もない友との会話も、せんじ詰めれば、われらの故郷に想いを馳せるためにある。現世で遭遇した光の数々と、脳髄の記憶が流れゆく先に。可笑しな日常を笑い合う奥底を、宇宙の血流は脈々とながれている。そうでなくては。あの甲高い声と、無気力な言葉を生み出す、空っぽで虚ろな空洞が拡がっていてはならんのだ。

光に導かれるかぎり、人生の遅速など取るに足らぬ問題である。一生涯でどれほどの財を築き上げられるか。そんな些末な事柄にうつつを抜かすのは、眩い光に目が眩んでいるにすぎぬ。眩暈にふらつき、人間の平衡感覚を失っているにすぎぬ。無限に交差する光芒のどこかで、おれたちは交わっているにすぎぬ。

 

2024.10.12