清らかなものへと向かう意志が最後の希望となる[713/1000]

お前が最初の罪科を犯してから、真の自由が失われてしまったということ、そしてその自由は正しい理性と常に絡み合って存在し、理性を離れて別個に存在するものではない、ということだ。人間の場合、理性が曇ったり、理性の権威が失墜したりすると、異常な欲望と増長した情熱がすぐさま理性からその統治権を奪い、それまで自由であった人間を奴隷の境遇に陥れてしまう。

ミルトン「失楽園」

人間は力によって神に帰一する。力の根源の神秘を暴くことが、魂に課せられた人間の使命だ。ゆえに、この世の賜物に感謝するには力がいる。力を失えば呼吸は浅くなり、脳髄は衰弱する。呼吸を失えば、欲望の僕とならざるをえない。洗練されすぎたものや、便利なものを手放せなくなった現代人の堕落は、衰弱した呼吸によるところが大きい。私が素朴な生活にひとつの希望をみるのは、素朴な慣習が深い呼吸を友とするからである。言葉にしても素朴な言葉を重んずる。素朴は脳髄を鍛え、脳髄は知性を生み、知性は自由を生む。肉体の健康なんてものは、根源が潤えば自ずと善くなる。食だの睡眠だの科学の戯言に振りまわされては気の毒だ。気高いもの、清らかなものへと向かう意志が、俺達の最後の希望となる。

 

2024.6.1

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