悲しい記憶も、苦しい記憶も、ぜんぶが宝物になる。[940/1000]
近所のお爺さんとお婆さんが肉まんを持ってきてくだすった。ずいぶん寒くなったねと、お婆さんは昔の話をしてくれた。小学校からの帰り道、手がつめたくて、つめたくて、泣きながら帰ったのだとか。お母さんが桶にお湯を用意して待ってい…
近所のお爺さんとお婆さんが肉まんを持ってきてくだすった。ずいぶん寒くなったねと、お婆さんは昔の話をしてくれた。小学校からの帰り道、手がつめたくて、つめたくて、泣きながら帰ったのだとか。お母さんが桶にお湯を用意して待ってい…
こうして私は、私の子どもたちのほうへと行きつ戻りつしながら、自分の仕事の真っただ中にいる。自分の子どもたちのために、ツァラトゥストラは自分自身を完成させなければならない。 というのも、ひとが心底愛することができるのは、自…
やる気だとかモチベーションだとか、そんなものに頼る必要はない。やる気なんてものは、わざわざ出そうとせずとも、恩人に恥じない生き方をしようと信ずれば、自ずと正される心のありようである。天から疎遠になり、恩を感じる力が弱まっ…
私たちは、人間の手の入らない「原生自然」を一番価値のあるものだと考えている。また人為は、自然と対極にあるものだと位置づけている。しかし、これは明治時代に生まれた「誤解(新しい定義)」なのである。 宇根豊「国民のための百姓…
この冬、氷餅の仕事をしている。数日かけて凍らせた餅を、木の竿に干していく仕事である。何もむずかしいことはない。誰だってできる、替えのきく肉体労働である。肉体を働かせ、対価として賃金を得ている。冬が終われば仕事はなくなる。…
氷点下11度。寒さのせいか頭痛がする。血管が収縮し血流が滞ったか。そういや昨晩も、寒くてよく眠れなかった。風呂屋に行こうとしたが、道が凍っていたので諦めた。この機会だ。熱々の玄米粥をつくることにした。お粥はいい。凝縮され…
小寒。ついに氷点下10度をむかえた。手が冷たくてしょうがない。幸い、ちょうど焼杉を焼いているところなので、炎に当たりながら仕事ができるのが救いである。杉を焼くのは、全行程のなかでも、一二を競うほど楽しい仕事だ。下手くそで…
悲しみは分断によって生じる感情である。個と個が分断して生きる時代、社会の根底は悲しみに満たされている。ちいさなテレビを大勢の人間が囲った時代と異なり、娯楽までもが個別化する今日は、楽しいや嬉しいといった感情はどれもが二次…
正月はご馳走に恵まれたが、玄米にかなう食べ物は一つもなかった。そりゃそうだ。私にとっての玄米は、胃袋を満足させるにかぎらず、魂に力を与える命の源流でもある。すき焼きも刺身も、そりゃ美味いが、所詮は肉体レベルの話だ。魂を主…
江戸の頃まで、日本には”自然”という言葉は存在しなかった。山も川も、草木も空も、美しい自然は当たり前のように存在し、自己もまた自然の一部であった。”自然”という言葉は、文明…