お米ナショナリズム[801/1000]
「その猪の肉ない、裏の物置に吊るしておいたんだわい。まだいっぺ吊るしてあっぞい」 「へーえ。たまげたなあ。どうして腐んなかったんだろう?」 「わげね。腐んねえようにしてあんだ。ぶづ切りした肉に塩まぶしてない、それを縄でき…
「その猪の肉ない、裏の物置に吊るしておいたんだわい。まだいっぺ吊るしてあっぞい」 「へーえ。たまげたなあ。どうして腐んなかったんだろう?」 「わげね。腐んねえようにしてあんだ。ぶづ切りした肉に塩まぶしてない、それを縄でき…
畑で働きはじめて早一ヵ月。早朝、数時間だけ働いて、それからは森に家をつくるために、木を伐ったり、整地したりしている。一日数千円だけでも、収入があると安心するものだ。いくら水道光熱費や、食費がかからないといっても、完全に金…
胸高直径40センチのアカマツの抜根作業も今日で三日目となる。果てしなく思われたが、スコップで地道に土を掘り起こす一杯の積み重ねで、ようやくあと少しのところまできた。人力ではできないと言われることも、重機のない昔の人間は当…
米が尽きようとしているが、どこに行っても米がない。パンやうどんで腹は満たせるが、腹が満たされることと、精神に蓄えられることは別である。私が玄米を好むのは、飢えをしのげることに限らず、心までもが生き生きと力強くなるからであ…
小屋づくりに向けて、森を整地している。直径40センチあるアカマツの抜根作業は果てしなく、疲れて動けなくなるとハンモックに横になり、どういう風に家を建てようか思案する。 世界を見渡せば、自ら家をたてる人間は意…
ドドドーンという凄まじい地響きとともに、アカマツの大木が倒れる。切株のあたりから放たれる松脂の甘い香りが、暖かい風に乗って森中を満たしているのが何とも心地よかった。斧で刈り取ったアカマツの梢を、切株の裂けめに刺して合掌す…
「月光の夏」という映画を観た。出撃前、今世と別れを告げるために、ベートーヴェン「月光」をピアノで弾き、戦死していった特攻隊青年の実話をもとにした話。私自身、月光には深い思い入れがあり、色んな人の演奏を聴く。第一楽章は重く…
森で木こりをしている。今年の冬に寒さから身を守るための、ちいさな家をつくるためだ。昨年もひとつ小屋をこしらえたが、すきま風があちこちから入り込み、とても寒い思いをした。私の棲む森は、昼間でも陰っており、氷点下であることが…
食事が人間をつくるというのなら、日本人の魂を醸成するのは米ではなかろうか。外国から帰国した人間が口を揃えて「日本のお茶漬けがいちばん美味い」という様を、三島由紀夫は”お茶漬けナショナリズム”と皮肉…
あれほど難しいと思われた病までもが、笑っているうちに治癒してしまったという話をよく聞く。笑いが肉体に及ぼす影響の大きさに思いを巡らしていると、宇宙の創造主であるデミウルゴスの神意に触れられそうな気がしてくる。よく笑う人間…