男にとって誇りを失うことがどれほどあってはいけないことか[667/1000]

こんなところで腐る自分は本意ではない。だが、どうしたらいいかも、どこへ向かえばいいのかも分からない。腐った日々は空虚に過ぎ去り、一生取り返しのつかない泥道を歩きつづけている。このまま腐って人生を終えるのか。泥沼に沈んだまま、何の値打ちもない人生をおくるのか。

嫉妬、傲慢、怠惰、憤怒、強欲、色欲、暴食。ああ、大罪。己はいったい、どの面下げて苦しみを嘆くのだ。身体は罪に濡れ、魂は随分と痩せこけた。己の尊厳を貶めることは、神に対する何よりの冒涜だ。ああ、誇りよ、どこへいった。男にとって、誇りを失うことがどれほどあってはいけないことか、己は散々身をもって学んできたはずだろう。

誇り。いまお前がやるべきことは、もう一度、その胸を叩くことだ。右の手でこぶしをつくり、その胸をドンと叩いてみろ。何の取柄もなくたって、叩いてみれば、気概は生まれる。涙に触れるまで、何度だって叩いてみろ。ああ、お前の誇りは完全に失われちゃいない。それに気づけるはずだ。

言ふなかれ、君よ、別れを、

世の常を、また生き死にを、

海ばらのはるけき果てに

今や、はた何をか言はん、

熱き血を捧ぐる者の

大いなる胸を叩けよ、

満月を盃にくだきて

暫し、ただ酔ひて勢へよ

 

「戦友別盃の歌」 大木惇夫

 

2024.4.16

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