爽やかな早朝に、10R(17円)の硬貨を1枚渡し、熱々のチャイを飲むのが、インド旅の楽しみの一つであった。昼は150R(255円)もあれば、十分なマサラとチャパティ(カレーとナンのようなもの)にありつくことができたが、少し街の中心から離れてみると、50R(85円)や80R(136円)で量も味も申し分のないマサラとチャパティを偶然みつけることができた。数十円から百円程度の差でしかないが、安くて美味い飯はどこの国でも人気である。
私の金銭感覚は貧相なもので、17円のチャイも、100円に満たない飯も、まっとうな値段設定に思われた。私はローカルフードしか食べないつもりであったが、ついに旅の最終日、インド人の若い女性に連れられて、はじめてマクドナルドに入った。朝マフィンが1つ100R(170円)、コーヒー一杯が40R(68円)である。これでも十分安いが、50Rで量も味も申し分のないマサラと比べたら、やはり洗練されている企業商品は割高である。
インドの旅で使った金は、毎日手帳に記すことにした。以下に、航空券代の約94,590万円(往29,730円 復64,860円)が加わって、こたびの約2週間のインド旅で使った総額は、「121,909円」である。思ったよりも航空券代が高くなってしまったことは痛手であったが、全体を振り返ると、食の値段の割に宿が高かった。バラナシで1泊250R(約425円)の宿を確保できたのは幸運だったが、首都のデリーではどんなに安くとも1泊1000円くらいが、安心できる最低限の価格帯に思われた。
<2024.2.28>
60R メトロ
10R チャイ
5R プーリー(小麦のスティック)→これをチャイに浸けて食べる
180R マサラ、チャパティ(カレーとナンみたいなもの)
20R 水
2000R トゥクトゥク(ぼったくり)
1100R 宿(2泊分)
1675R 鉄道(デリー→バラナシ)
30R 屋台飯
10R トゥクトゥク
計:5090R (約8653円)
<2024.2.29>
10R チャイ
88R マサラ、チャパティ
40R アイスクリーム
20R 水
40R バナナ7本
計:198R(約336円)
<2024.3.1>
10R チャイ
10R チャイ
5R プーリー(小麦のスティック)→これをチャイに浸けて食べる
20R 水
50R チャーハン
20R 水
20R バナナ4本
15R 水
20R ナッツ
計:170R(約289円)
<2024.3.2>
200R トゥクトゥク
20R 水
10R お菓子
計:230R(約391円)
<2024.3.3>
20R 水
80R マサラ、チャパティ
30R ラッシー
10R 水
20R 水
計:160R(約272円)
<2024.3.4>
560R 宿2日分
10R オレンジ1つ
30R フルーツジュース
150R 土産
50R アイスクリーム
10R クラッカー
20R 水
計:830R(約1411円)
<2024.3.5>
40R マサラ、チャパティ
20R 水
20R オレンジ2個
40R コーヒー
10R 屋台飯
10R ラスク
計:140R(約238円)
<2024.3.6>
120R マサラ、チャパティ
20R 水
40R アイスクリーム
20R ナッツ
計:200R(約340円)
<2024.3.7>
1000R 宿4日分
20R 水
80R トゥクトゥク
10R チャイ
10R チャイ
20R 水
50R ラッシー
100R トゥクトゥク
100R マサラ、チャパティ
20R 水
10R クッキー
計:1420R(約2414円)
<2024.3.8>
4500円 鉄道(バラナシ→デリー)
150R トゥクトゥク
20R バナナ3本
10R チャイ
10R チップス
1200R 宿2日分
計:1390R+4500円(約6863円)
<2024.3.9>
10R チャイ
30R マサラ、チャパティ
960R 土産
50R アイスクリーム
40R マサラ、チャパティ
20R ジュース
計:1100R(約1870円)
<2024.3.10>
10R チャイ
285R ハンバーガー、コーヒー(2人分)
20R メトロ
30R メトロ
40R ジュース(2人分)
100R 博物館入場料
40R メトロ
1000R 宿1泊
80R バタパオ(スパイスのきいたサンドイッチ)
90R 土産
90R マサラ、ドーサ
10R チャイ
20R お菓子
計:1815R(約3085円)
<2024.3.11>
40R メトロ
60R メトロ
300R 空港サンドイッチ
130R アイスコーヒー
150R 空港 水
計:680R(約1156円)
合計:27, 319円 (13,423R + 4,500円)
デリーは宿代がバラナシの倍近くした。だが、飯の代金はバラナシと大差がないように思えた。バラナシでは、チャイと食と宿代を合わせても、1日1000円もあればお釣りがきた。繰り返しになるが、1杯10R(17円)で飲めてしまう熱々のチャイは、私がインドの旅において最も愛したものの一つであった。
冒頭でも述べたが、私の金銭感覚は大変貧相である。日本の森で隠遁生活をしていた頃も、1日200円、月6000円あれば生活していくのに十分であると心得ていた。しかし、この貧しい金銭感覚がまっとうな感覚であると証明してくれたものが、1杯17円のチャイであった。私は熱々のチャイを飲みながら、生活者の日常の底辺に溶け込んだ、文化的で安らかなひとときに、インド人の仕合せを感じたのだ。
偏見かもしれないが、インド人はチャイがあるかぎり元気なのだろうと思った。貧しい乞食も、10Rのチャイを飲むひと時だけは、己の貧しさを忘れることができるのではなかろうかと、そんな想像をした。チャイがあるという点に、私はインド人が羨ましかった。どんな貧しい人間もチャイを飲むことは平等であった。
2024.3.16
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