ざわつきは炎のなかに投げ入れること。自分の意志とは無関係に跡形もなく燃えてゆく。醜態は紙切れのように永遠の灰と化した。自分の意志とは無関係に働く自然の法の下、神の心に救われたと感じるのだ。
もう悪意に屈するまいと強く誓った。それでも誓いがいとも容易く破られるのは、悪意も同じくらいの覚悟を持って襲いかかってくるからである。自分が強くなれば敵もまた強くなる。ゆえにいつもぎりぎりの戦いを強いられる。自分だけでなく皆がぎりぎりの戦いを強いられている。悪意に屈せず乗り越え続けた者が称賛される世の中である。
私は天を見上げなければ、駄目になる人間である。世間を眺めている時間が長くなるほど、退屈でくだらない考えに捕らわれるようになる。それが分かっていても世間を眺めるのは損得に関わるし、何より楽だからである。自堕落な人間や、腐敗した政治家を軽蔑しながら、同時に何処かで甘んじている自分がいるのである。
電気を一切使わない森での三ヵ月の隠遁生活は素晴らしいものだった。朝から晩まで、さらには眠っているときまで書物の魂と対話しつづけた。人とも会わない孤独な時間だったが、天を見つめ、何人もの偉大な魂を身近に感じていた。
そんな暮らしぶりに、今一度戻りたいと願う。あの時分に綴った言葉は透明で美しかった。詩の心さえあれば、どう死ぬことになっても構わないと確信した。詩の心があれば…。
2025.2.20