ああ、神様、これでよかったのだろうか。[971/1000]

薪ストーブの設置が完了した。壁に穴を開け煙突を出し屋根の上まで伸ばした。薪ストーブから放射される熱で壁が焼けないために、実家で捨てられるところだった波板鋼板を加工して再利用した。波板の後ろには、さらにブロックが敷いているので、壁は十分に守られるだろう。黒い鋳物の薪ストーヴや、赤レンガの炉壁のほうが、そりゃ見た目も機能も立派であるが、そもそも私は欲張れる立場にない人間なのだから、手元にあるものを工夫して使うより仕方ないのである。

半年間やってきた家づくりは、まもなく終わりを迎える。家の前に踊り場を拡張したり、階段や椅子をこしらえたり、もちろんまだ仕事はあるが、森に何かをつくりつづけるかぎり、どこかで節目を持たないと、終わりがないのである。明日、床の掃き掃除して、水雑巾でよく拭けば、いよいよ本格的に住めるようになる。ここで一区切りとすることにしよう。

 

まだ実感は湧かないが、半年間の労働にようやく肩を下ろせるときがくる。高揚感をもってはじめた家づくりだったが、想像以上に工程が長引き、初動の勢いで走り終えることは叶わなかった。夢の力は重力に失墜した。もう走り終えてもいい頃だと思っているのに、マラソンはいまだ、中盤にさしかかったところだったのである。一つまた一つと、形になっていく充実感に後押しされるよりも、ちっとも終わりが見えない毎日に、焦燥と苦しみを抱いたことのほうがずっと多かった。

 

苦しみは報われるだろうか。苦労した分、完成したときの歓びは大きいように思われるが、心が疲弊しきっているからか、まだ実感は湧かないのである。拭き掃除まですべてが終わり、いよいよ薪ストーブに火を灯した瞬間、安堵の瞬間は訪れてくれるだろう。ほんとうにまだ実感がないが、ついに家づくりが終わるのである。ああ、神様、これでよかったのだろうか。

 

2025.2.16