2024年2月27日にインドに旅立つ。首都デリーにまず向かい、ガンジス川を生活に汲むバラナシ、ブッタが悟りを開いたブッタガヤ、混沌の地コルカタの順に、北インドの4つの街を遍歴することにした。
予算は10万円だ。宿が1泊500円、食事が1日400円(200円×2食)、チャイが100円(30円×3杯)と見積もれば、1日あたりの生活費が約1000円である。この予算を徹底すれば、1ヵ月滞在しても3万円だ。
当然、これ以外にも飲水を買ったり、リキシャで移動したりすれば、追加で金はかかる。それに、田舎に行けば安い宿を見つけるのに苦労するだろうし、そもそも疲労が蓄積し、心労に耐えられなくなれば、少しいい宿を奮発したり、贅沢な食事をしてしまうこともあるだろう。そう考えると、かなりガバガバな予算計画ではあるが、大体の目安をおさえておけば、大きく外れることはないと楽観している。たまに痛い目をみることもあるが、金がなくなれば、おとなしく帰るまでだ。帰りの飛行機代まで使いきってしまい、インドに取り残されなければ、別にどうとでもなる。
沢木幸太郎さんの旅物語である、深夜特急を読んでいた感じだと、インドはもう少し安く旅できるものだと勝手に思っていた。少なくとも宿の値段に関して言えば、事前調査をしているかぎりでは、オーストラリアのドミトリーとそう変わらない印象である。インドにも水平化の波は当然及んでいるようで、ネットに載っていないローカルな宿でもないかぎり、破格な旅ができるわけではなさそうだ。
クル族のプラティーパ王の息子シャンタヌは、森で美しい娘を見かけて求婚した。娘は承知したが、分が何をしても決して咎めないように、という条件をつけた。彼女は七人の息子を生んだ。しかし彼女は、生まれて来る息子たちを次々とガンジス川に投げ込んだ。王は約束を守って、何も言わなかったが、八番目の息子が生まれた時、ついに彼女を制止した。彼女は、自分はガンジス川の女神(ガンガー)であると明かし、息子をつれて立ち去った。
バガヴァット・ギーター 上村勝彦訳
ガンジス川の女神は、生まれてくる息子を次々とガンジス川に投げ込んだ。女神様はなにを意図していたのだろう。悪魔がイエスに試したように、女神も王が約束を守るかどうか試したのだろうか。ガンジス川には、精神の探求者に対して、人間を試す何かがあるのだろうか。
私がバラナシをいちばん楽しみにしているのは、言わずもがなガンジス川があるからである。ガンジス川には神秘がある。生活の中心に信仰があることは、信仰の自然本来な形をあらわしており、今日のインドにおいて信仰心が残っているとすれば、街並に沿って流れるガンジスの地理的な条件に恵まれたことが大きいだろう。インドの保守的な部分にはカースト制度がある。ここで、善悪を論じるなど恥知らずな行いなどするものか。ただ、信仰と魂に触れてみたいと思うのだ。魂を震わせたまま、それを日本に持ち帰ることが、今回の旅の目的らしい目的である。
インドの旅が終わったら、東京に寄ろうと思う。ちょうどこの記事が投稿されている頃だろう。親愛なる友よ。インドの土産でも渡しに行けたら何よりだ。
2024.2.14
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