生きることは権利でなく戦いとならねばならぬ。[961/1000]

おお、孤独よ。あなたはわが故郷だ、孤独よ。あなたの声はどんなに幸せに、どんなに優しく私に語りかけてくれることか。

ニーチェ「ツァラトゥストラはこう言った」

雪の世界に閉ざされると生きるか死ぬかの戦いになる。だが、森から一歩外に踏み出せば、人々は変わらず平然と暮らしている。切羽詰まった状態で、生存に振りきった玄米粥を食べていると、次第に凄まじい形相を帯びてくる。だが、生きるのに不可欠でもない、カップ麺や焼きそばをつくるだけで、享楽を愉しむ文明人の余裕が生まれてくる。

生存は生命にとって第一の問題である。今日の社会では、生存問題に直面するのは、路地裏や高架下で眠るホームレスくらいであるが、元をたどれば、生活から国家運営に至るまで、すべては生存問題の延長線上にあったのである。生きるために畑を耕し、木を伐り、家をつくり、結婚して子を授かり、子を手伝わせ、近所の者同士助け合った。他民族の侵略から自国を守るため、兵を鍛え、経済を強化し、民を統制し、有事に備えた。

生命が生存から切り離されることは、より高次の幸福に思える。だが生存問題は、どんな生命からも切り離せるものではないのである。生きることは権利でなく戦いとならねばならぬ。事故に遭うのも、通り魔に刺されるのも、災害に遭うのも、不幸だが、すべては自己生命の力不足が引き起こしたことであると認めなければ、平和ボケのなかに生命は死んでいく。

幸福は願われる。だが、力と共存しなければ、健全で誠実なものとはなりえない。毎日が途切れることのない戦いである。たとえ孤独だとも、それがわれらの故郷である。

 

2025.2.6