人間の力を取り戻す家[880/1000]

板倉工法なる家づくりがあるらしい。伊勢神宮や正倉院にも用いられる伝統的な工法だ。120角の桧を柱とし、厚さ30ミリの杉板を、柱に掘られた溝に沿わせて落とし込んでいく。床、壁、天井のすべてに、厚手の杉板を用いるのが特徴で、合板や石膏ボードで覆ってしまうこともなく、内側から家の構造をよく眺めることができる。溝に落とし込んだ30ミリ厚の杉板が強度を確保し、同時に断熱性能も備える。

今日は、ツーバイフォー工法が盛んとなり、北欧産のホワイトウッドが使われることが当たり前となったが、もし和魂洋才の家があるとすれば、形姿を変えようと、その材質は桧や杉で建築される家に違いないと感ずる。魂の永遠性を象徴するように、桧は湿気や腐朽に強く、高温多湿の日本の風土によく合っている。杉は日本の固有種であり、古くから神社仏閣で用いられ、精神的な支柱として日本人を支えてきた。西欧文明の強大さを前にしても飲み込まれぬよう、明治時代に和魂洋才の言葉が生まれたと記憶する。日本人の精神を賦活する家とは何か。人間の力を取り戻す家とは何か。そんなことを改めて問いに掲げ、家づくりを思考する。

 

2024.11.16