歪んでしまった自動思考を変えると、人生の捉え方が変わるため、人生の方向性がガランと変わることがあります。
それだけ世界を歪めて見てしまうくらい、人の思考は偏っているのですね。
自動思考を変えて、人生の捉え方を変えると、気分が前向きになって自分を大切に生活できるようになります。
この記事では、そのための3ステップを紹介していきます。
Contents
1 自動思考とは?
私たちは、毎日必ず、何かしらの感情を得ます。
嬉しい、楽しい、愛しいというような、自分を満たしてくれるものから、怖い、苦しい、不安など精神的な苦痛を与えるものまで様々です。
これらの感情は、例外なく、『自動思考』がつくりだしたものです。
自動思考は、言葉のとおり無意識のレベルで、頭の中に自動的に流れている思考のことですね。
人は1日に6万回思考すると言われていますが、その大半はこの自動思考によるものです。
人は、この自動思考に反応して感情を感じるため、もしこの『自動思考』が歪んでしまっていると、否定的な感情になってしまいます。
悲しまなくても良い所で悲しい思いをしたり、必要以上に苦しんでしまうということですね。
自己肯定感(I am OKの感覚)を下げてしまうことも、自動思考による状況の解釈が歪んでしまっていることが1つの原因です。
歪んだ自動思考を正せば、不必要な感情に振り回されることも無くなりますし、自分を肯定できるポジティブな感情も増えていきます。
2 自動思考を見つける(STEP 1)
自動思考は無意識で流れていますが、表層的な部分で行われているため、注意深く思考を観察すれば気付くことができます。
特に、『感情』が強まっている時ほど、見つけることは簡単になります。
強ければ強い感情が生まれている時ほど、自動思考も存在感を増しているからです。
だから、感情を頼りにしながら、次の質問に沿って、自動思考を探っていきます。
簡単にできるので、実際に次の質問に答えてみてください。
自動思考を見つける3つの質問
- 過去7日間を振り返って、1番ネガティブな感情になったのは、どんな状況ですか?
- それはどんな感情で、どのくらいの強さ(1~100%)ですか?
- その感情になった時、頭の中にはどんな考えや映像が浮かんでいましたか?
否定的感情の例
悲しい, 恐れ, 寂しい, 不安, 心苦しい,
不幸, 怯え, 緊張, 心配, 恥ずかしい,
屈辱的, 妬ましい, がっかり,イライラ etc
この質問では、1で状況、2で感情、3で自動思考を見つけます。
見つけた感情を、言葉にするのが難しい時は、「否定的感情の例」を参考にしながら、自分の感情を見つめてみてください。
また、自動思考は言葉になっている場合もあれば、映像だけである場合もあります。
2の感情になったとき、どんなことが頭に浮かんでいたか?ということを探ってみてください。
<例1>
- 過去7日間を振り返って、1番ネガティブな感情になったのは、どんな状況ですか?
→今、この記事を読んでいる時 - それはどんな感情で、どのくらいの強さ(1~100%)ですか?
→不安(60%) - その感情になった時、頭の中にはどんな考えや映像が浮かんでいましたか?
→「なんか、難しそうだ…。自分ではできないかも。」
<例2>
- 過去7日間を振り返って、1番ネガティブな感情になったのは、どんな状況ですか?
→昨夜、ベッドに入った時 - それはどんな感情で、どのくらいの強さ(1~100%)ですか?
→恐れ(50%) - その感情になった時、頭の中にはどんな考えや映像が浮かんでいましたか?
→「明日、仕事に行たくない。」,「苦手な人と会いたくない。」,「何か言われるのが怖い」
<例3>
- 過去7日間を振り返って、1番ネガティブな感情になったのは、どんな状況ですか?
→友達との約束をドタキャンされた時 - それはどんな感情で、どのくらいの強さ(1~100%)ですか?
→悲しみ(60%) - その感情になった時、頭の中にはどんな考えや映像が浮かんでいましたか?
→「わざわざ時間を作ったのにひどい!」
これらの例を見ても、この自動思考が感情に影響を与えていることが分かりますよね。
「え、自分ってこんな風に思ってたんだ!」と気づくことができたら、それだけで気持ちが楽になることもあります。
ただ、最初からうまく自動思考を見つけられなくても、焦らなくて大丈夫です。
今まさにこの瞬間、自動思考を見つけられなくて、「焦り」や「不安」を感じているのなら、頭の中に浮かんでいるものを探ってみてください。
「自分じゃできないのかも」「自分は置いていかれる」そんな自動思考が流れているかもしれません。
自動思考は、近くにありすぎるが故に、気付くことが難しい「灯台下暗し」のようなものです。
2.1 自動思考がうまく見つからない時は…?①
それでも、自動思考がうまく見つからない時には、状況をリアルに思い出してみることが助けになります。
例として、「好きな人とのデートの約束をドタキャンされた」ことを取り上げてみましょう。
<例:ドタキャンされた状況をリアルに思い出す>
一週間前から、今日好きな人とデートに行けることを楽しみにしていた。
ワクワクしながら、待ち合わせ場所である、名古屋駅の金時計前に30分前に到着した。
身なりも整ってるし準備完了だ。
「とりあえず、まだ30分前だし、今連絡して急かしてしまうのも悪い。10分前くらいになったら、着いた旨をLINEしよう!」と思い、とりあえず金時計の下で、ネットサーフィンをして時間をつぶしていた。
そんな時に、好きな人からLINEの通知がきた。
LINEの通知「今日いけんくなった。じゃ!」
LINEを見た瞬間、急に悲しくなった。
⇒ドタキャンされて悲しくなったのは、相手が悪びれている様子が全くなく、雑に扱われた(=自分は雑に扱われる存在なんだ=自動思考)と思ったから
この例の場合、ドタキャンされたことよりも、雑に扱われたことが、感情に影響していました。
状況をリアルに思い出してみると、自動思考を捉えやすくなります。
2.3 自動思考をうまく見つからない時は…?②
それでも、まだ自動思考がうまく見つけられないという時は、下向き矢印法を用います。
下向き矢印法は、自分の潜在意識(下)に向かって、自分の信念や思考を把握するために使われるものです。
次の質問を用いると、信念や自動思考の本当の姿にアクセスしやすくなります。
自動思考にアクセスできる質問
- その後どんなことが起きると予測していましたか?
- その状況はあなたにとって、どんなことを意味しますか?
<例:朝仕事へ行く身支度をしている時/恐れ(70%)>
- その後どんなことが起きると予測していましたか?
⇒今日も仕事で、嫌な人に会わないといけない。嫌なことをまた言われる。 - その状況はあなたにとって、どんなことを意味しますか?
⇒自分には力がない。(感情に最も影響していた自動思考)
この下向き矢印法、潜在部分に近づくために、繰り返して使うこともできるので、行き詰まりを感じたら納得がいくまでやってみてください。
「え、自分ってこんな風に考えてたんだ。」という新たな面が見つかると思います。
3 自動思考を検討する(STEP 2)
さて、自動思考は無数にあるので、見つかった自動思考が対応するに値するものなのかを見極めることが必要になります。
ただ、このステップではそこまで難しく考えずに、以下の基準であれば、修正していけばよいと僕は考えています。
修正する必要のある自動思考
- 感情的な苦痛を伴うもの
- 高頻度で発生するもの
そもそも、歪んだ自動思考を修正するのは、不必要に感じてしまっている感情的な苦痛を和らげるためですよね。
だから、強い悲しみや、怒り、不安を生み出している自動思考であれば、それに対応していく価値は十分あると思います。
自分自身でコントロールできている感情よりも、圧倒されてしまう感情の背後にある自動思考を選ぶということですね。
また、その自動思考が高頻度に発生するものであればあるほど、それは自分の中核信念に根付いている可能性が高いです。
いつも決まって起こる感情の沈みがあるのであれば、次のステップで対応して、思考の歪みを変えていきましょう。
<感情的苦痛が強くて、高頻度に発生する例>
- 新しい人と会う度にいつも緊張してしまう/緊張(80%)/「自分は嫌われてしまうかもしれない。」
- 毎週日曜日の夜になると、いつも気が重くなる/不安(90%)/「仕事ができなくて、また嫌な思いをする。」
4 自動思考を変える(STEP 3)
それでは、歪んだ自動思考を修正していきましょう。
自動思考を修正するというと、少し難しく思えるかもしれませんが、1人でも簡単にできるので安心してください。
このステップでは、思考の歪みに気付いて、物事を捉え直すことを行っていきます。
思考の歪みは主観的なので、客観的な事実にも焦点をあてていくことで、解釈が変わっていくのですね。
1~3までは、自動思考を見つけて、検討することと重複していますが、復習もかねてやってみてください。
思考の歪みを正す手順
- 状況
- 感情(強さ:1%~100%)
- 自動思考
- 自動思考を支持する根拠
- 自動思考に反する根拠
- 認知の歪み
- 適応的な思考
- 感情の変化(強さ1~100%)
①状況
ネガティブな感情になってしまった時の状況を記入します。
具体的であるほうが、自動思考を捉えやすくなるので、なるべく具体的に書くことをおすすめします。
②感情
次いで、①の状況で生まれた否定的な感情を記入します。
また、その感情がどのくらいの強さなのかということも一緒に記入してください。
0% | 25% | 50% | 75% | 100% |
全く怖くない | やや怖い | 中程度に怖い | かなり怖い | ものすごく怖い |
③自動思考
②の感情になった時に、どんなことが頭に浮かんでいたのか記入します。
この自動思考が、②の感情を直接つくりだしたものです。
また、把握した自動思考に、どれくらいの納得度を抱いているかも、感情と同様記入してください。
もしこの納得度が低ければ、下向き矢印法にて、別の自動思考を探りましょう。
④自動思考を支持する根拠
③で導き出した自動思考を裏付ける根拠を書き出してみます。
ここで気を付けることは、思い込みを書くのではなく、客観的な事実だけを書くことです。
<例:『自分は女性には受け入れられない』根拠>
- 3人の女性社員に挨拶をしても、振り向いてくれもしなかった
- 学生時代、Aさんにフラれた。
- 電車でいつも女性が隣に座らない
ここで、根拠を列挙していこうとすると、思い込みばかりで客観的な事実が少ないことに気付くことが多いです。
誰が見ても本当にそうだ!というくらいの強い根拠って中々無いものなんですね。
思い込みだった例も以下に書いておきます。
<例:『自分は女性には受け入れられない』は単なる思い込みだった>
- 女性と付き合った経験がない(付き合った経験が無いことは、必ずしも異性に受け入れられないということではない)
- 女性から軽蔑の視線を感じる(思い込み)
- 自分の容姿は、女性に好かれるものではない(思い込み)
⑤自動思考に反する根拠
次に、自動思考に反する根拠をあげていきます。
自分の自動思考が歪んでしまっている時、その自動思考を支持する情報ばかり目に入ってくるのですが、実際は自動思考に反する事実もたくさんあるのです。
自動思考に反する根拠を書き出してみると、いかに自分の思考が歪んでいたのか身に染みて分かると思います。
<例:『自分は女性には受け入れられない』に反する根拠>
- 無視された女性社員3人以外の、7人の女性社員とは上手くやっている。
- 無視されたのではなく、話が盛り上がっていて、自分の声が届かなかった可能性もある
- 女性の親友が3人ほどいる。
- 行きつけのスタバで、女性の店員さんと気さくに会話をする。
- 付き合った経験はないが、告白された経験ならある。
上記の例のように、認知が歪んでしまっていると、見えるはずのものも全く見えなくなってしまうんですね。
実際に、このステップで自分の認知の歪みに気付くことが多いです。
⑥認知の歪み
思考の歪みに気付いたら、それがどのようなものであったかを知っておきましょう。
自動思考の歪みは、いくつかのパターンに分かれていて、人ごとに一貫していることが多いです。
だから自分の歪みのパターンを把握しておくと、他の自動思考にも対応できるようになりますので、しっかり把握しておきましょう。
認知の歪みは12パターンほどあります。
1 全か無か思考 2 運命の先読み 3 肯定的側面の否定や割引 4 感情的理由づけ
5 レッテル貼り 6 拡大視/縮小視 7 心のフィルター 8 読心術
9 過度の一般化 10 自己関連付け 11 「べき」思考 12 マイナス化思考詳しくはこちら⇒認知の歪み12のリスト~辛い時や悲しい時に見直したい思考の罠
<例>
- 感情的理由づけ⇒「自分は女性に好かれない」と決めつけて、相反する事実を無視していた
- 過度の一般化⇒3人の女性に無視されただけで、世の中の全ての女性から受け入れられないと決めつけていた
⑦適応的な思考
自動思考が妥当である根拠と、妥当でない根拠の両側を書き出した上で、自分の自動思考を再考していきます。
自分の中で、物事の捉え方を再定義するということですね。
それぞれの客観的な事実だけを見た上で、自動思考を変えていきましょう。
<例>
自分は確かに3人の女性社員に無視をされたが、その他7人の女性社員とはうまくやっているし、女性の親友も3人いる。
恋愛経験はないが、それは最適な機会が訪れなかっただけだし、女性に受け入れられていないわけではない。
修正前:自分は女性には受け入れられない
修正後:自分は全ての女性に受け入れられるわけではないが、ある程度の女性には親しみを持って受け入れられる。
適応的思考は、必ずしもスーパーポジティブになる必要はありません。
両側面の根拠と照らし合わせて、少しでも気分が楽になれば、それけで十分な進歩です。
⑧感情の変化
この自動思考を修正する目的は、感情的な苦痛を和らげることでしたね。
実際に、自動思考を支持する根拠と支持しない根拠から適応的思考をつくりだした上で、自分の感情がどれくらい変化したのか確認します。
これは、どのくらい自分の歪みを正せたか確認するステップです。
今の感情と、その感情の強さを書いたら、最初のものと比べてみましょう。
0% | 25% | 50% | 75% | 100% |
全く怖くない | やや怖い | 中程度に怖い | かなり怖い | ものすごく怖い |
ここでは、必ずしも0%にならなくても心配することはありません。
少しでも、気持ちが楽になったということは、認知の歪みを少し修正できたということです。
認知の歪みのパターンは一貫しているので、繰り返しこの①~⑧のワークを続けていくと、徐々に自動思考の癖も修正されて行きます。
5 自動思考に対応したら、媒介信念を修正する
この記事では、感情を辿って自動思考を修正しましたね。お疲れさまでした!
実際に実践してみて、何かしらの気分の変化や、自分自身の思考の歪みに気付くことが出来たのではと思います。
まだ、取り組まれてない人は、是非一度取り組んでみてくださいね。本当に誰でも簡単にできるので。
自動思考に気付くことにも慣れてきて、思考の歪みも取れてきたら、次は媒介信念を修正していきましょう。
媒介信念は、自動思考を作り出している、自分の強い思い込みのことでしたね。
自動思考よりも深い潜在部分にあるので、媒介信念を修正できると、さらに効果を実感できます。
自分の自動思考の修正にある程度慣れてきたら、次のステップに進みましょう。
媒介信念を修正する
いつも読ませてもらってるものです。
いつも、素晴らしい記事をありがとうございます。
僕は学生ですが、勉強のやる気が全く起きなかったのですが、とむさんが伝授してくれた色々なアイディアでだんだんできるようになってきてます!瞑想の効果はまだとむさんほど出ていませんが、継続してみます。
媒介信念を変える3ステップ!認知行動療法で自分を変える
執筆中って書いてありますが、既に記事を作り終わってるようですので、最新の状態にしたほうがいいかなと思います。
おせっかいでしたら、ごめんなさい!
冬の中2さん
いつも読んでくださりありがとうございます!
冬の中2さんの、勉強のモチベーションに貢献できていることを知れてとても嬉しく思います^^
それも、冬の中2さんがご自身と向き合われて、学びに誠実であるからこその結果ですね。
瞑想も実践されているということ、素敵ですね。
瞑想は、集中力だけではなく記憶力を強化する働きもあります。今後の試験にも、きっと役に立ちます。
記事のご指摘もありがとうございます。
すぐに修正いたしますね(^^)
これからも、お役に立てるような記事を書いていきますので、引き続き”もらとりずむ”をよろしくお願いしますね。
とむ