素っ裸となった傷だらけの生身を、乾いた風で拭いてやろう。[805/1000]

日ごとに憂いは滝となって降りかかり、不穏な情勢に胸はざわつく。ああ、こんなにも空は晴れているというのに。押し寄せる悪意が人間を地上に縛りつける。右に揺られ、左に揺られ。それでもおれたちは、きよらかな光を放すまいと、屈折を物ともせず、力の乗り物に乗ったまま、どこまでも無邪気に笑っていく。

力の風が呼びかける。先祖代々築かれた精神の砦は、心の湖底に眠っていると。何者にも汚されることのない燦爛たる光源が、忘我の旅路に涙を流すことを赦してくれる。ボロ雑巾同然に汚れてしまった衣服も、貧相に飾られた装飾も、蓄えられた財の一切もかなぐり投げ捨てて、最後に素っ裸となった傷だらけの生身を、乾いた風で拭いてやろう。

 

2024.9.2

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