森へ逃げろと教えてくれた 最後のただひとりの伴侶
真っ赤な太陽が すっかり沈みきってしまう前に
己の涙という涙は あなたの影を追った
人の皮を被った亡霊は まがいものの寂しさに熱をあてる
心が唾を吐き 腐り爛れているというのに
酷寒の森を想えば 人の住む町は驚くほど温かい
道化を脱ぎ捨てた哀れな亡霊に 肉体を生み落とす神の慈愛
揺れ動く命の涙に 身を弁え この世を詠い
死に身を擲てば 身体は烈しく凍りつき
生に深入りしすぎれば 心の芯から腐り出す
戦え 戦え 猪の牙を捧げ
逃げろ 逃げろ 野兎の耳となって
2024.7.28
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