悲哀の鐘[719/1000]

なんという空しさ

なんという空しさ、すべては空しい。

太陽の下、人は労苦するが すべての労苦も何になろう。

一代過ぎればまた一代が起こり 永遠に耐えるのは大地。

日は昇り、日は沈み あえぎ戻り、また昇る。

風は南に向かい北へ巡り、めぐり巡って吹き

風はただ巡りつつ、吹き続ける。

川はみな海に注ぐが海は満ちることなく

どの川も、繰り返しその道程を流れる。

コヘレトの言葉 1.2-7

 

来る日も来る日も、世の空しさを耐え忍んでは、目の前を流れゆく時間の歩みを眺めることしかできない。若かりしときの追憶は何の助けにもならないばかりか、かえってこの身は老いを覚えてしまう。小さな舟の軌跡は止まることなく、広漠たる宇宙の海へと吸収され、残された身体は悲哀の鐘に蹂躙されそうになるところを必死に堪える。夕刻、陽が傾けばひぐらしが鳴きはじめ、森は暗闇に静まり返り、あれほど賑やかだった小鳥たちもすっかり気配を消してしまう。星の見えない闇夜にあれば、すべての存在が終結を迎えたようで、闇と一つになった身体が実態を保てているのか不思議に思われてくる。寂寥に迫られる夜だからこそ、月との語らいに温かい涙がこぼれる。ああ、これ以上は言うまい。かなしみは、胸の内にしまっておくことだ。

 

2024.6.7

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