世を離れ家を捨て[712/1000]
アダムに向かってミカエルが言った。「たとえ自然に合致しているように見えても、何が最善であるかは、快楽を基準にして判断してはならぬ。現にお前がそうだが、人間というものは聖らかで純でもっと気高い目的、神に帰一するという目的の…
アダムに向かってミカエルが言った。「たとえ自然に合致しているように見えても、何が最善であるかは、快楽を基準にして判断してはならぬ。現にお前がそうだが、人間というものは聖らかで純でもっと気高い目的、神に帰一するという目的の…
願わくば神の怒りも私だけに加えられんことを!ああ、だがこれも愚かな願いだ!アダムよ、いったいお前は、地球よりも重い、いや全宇宙よりも遥かに重い、この罪の重荷を―たとえあの女に分担して貰うにしても―負えると思っているのか?…
わたしの力の神よ 今すぐにわたしを助けてください。 わたしの魂を剣から救い出し わたしの身を犬どもから救い出してください。 獅子の口、雄牛の角からわたしを救い わたしに答えてください。 聖書,詩編22.20 降りしきる雨…
青春は鳥の羽ばたき 幾度も地に堕ちて 涙に羽をもぐ 悪意は希望を落とした夢 性善説と性悪説が殺し合う中 尻尾を巻いて逃げ回る 業火に焼かれ 道化に小突かれ 安寧の地を求め ひとり砂漠を越えていく この世のものとは思えない…
何処へ行く。戦か、ああ、俺は弱い。皆んなは進んで行く。道具を、武器を……時をかせ。…… 撃て。俺を撃つんだ。さあ、やってくれ。いけなきゃ降参してしまう。―意気地なしめ。―自殺だ。俺は馬の脚下に身を投げる。 ランボオ「地獄…
崇高を噛みしめた空の 清澄に手を伸ばす 戦士の記憶を辿り 古傷を想い 名を捨て 故郷を捨て 世を捨てた この身の淪落と、眠りと麻薬に溺れる日々は どうしても救いようがない 同情の値打ちもない憔悴の果て こぼれる光と涙に …
身体の深くに、病気の根、無力の根、絶望の根を張り巡らし、無為に耐えかねよく働き、悲哀に潰され幸福に寄る。追っても追っても届かぬ永遠、楽園はここになければどこにある。困窮は欲望を生み、欲望は気分を満たした。この世で眠りつづ…
社会を憂うも日常に焦がれ 空身の亡霊に耐えかねて この世の家に夢をみる 愛する妻、我が友の 未来から垂らされた記憶は 寂しい隠者の独り言 意志よ お前は情熱に飢えている お前はただ、混沌を劈き その返り血を浴びていたいだ…
科学の足は遅すぎる。祈願は疾駆し、光は轟き、……それも俺には解っている。あんまりたわいがない、暑苦しい。 ランボオ「地獄の季節」 進歩に楯突き、無為の手に堕ちたとはいえ、森に拾われたのは唯一の救いであった。自然には地水火…
この精神の乱脈も、所詮は神聖なものと俺は合点した。耐え難い熱に憑かれて無為の日を過ごしては、俺は獣物らの至福を羨んだ、―穢れをしらぬ土竜の睡りや、幽界の無垢にも似た青虫を。 ランボオ「地獄の季節」 倦んだ身体を故郷へ運ぶ…