虚無主義とは②[836/1000]
死にたいかと問われ、死にたいと答える者などいるものか。生きたい。生きたいが、死んで救われるものもあるということだ。国のために散っていった特攻青年たちは生きたいと強く願っただろう。そうでなくては。家族を愛し、この世のすべて…
死にたいかと問われ、死にたいと答える者などいるものか。生きたい。生きたいが、死んで救われるものもあるということだ。国のために散っていった特攻青年たちは生きたいと強く願っただろう。そうでなくては。家族を愛し、この世のすべて…
行動の結末に生があるとき、人間は虚無に堕ちる。生きとし生けるものにとって、現在の行動のはるか彼方に据えられた結末は死であるが、生の舞台の光が眩しくなるにつれ、現在の行動は死と一直線に繋がらなくなる。80歳、90歳まで生き…
道徳家を嘲る。だが、無道徳な人間は嘲るにも値しない。太陽と月の気まぐれで、いつの日か道徳は破れるときがくる。地獄に堕ち、罪に窶れ死ぬ。魂の雄たけびに肉体は耐えられるか。だが、小賢しい悪徳を重ねるくらいなら、揶揄されし道徳…
森の木を伐採して空き地をつくった。小屋の設計と見積もりもした。いよいよ家を建てる準備が整った。今度は10年、20年住める小屋にしたい。去年つくった小屋は掘っ立て小屋だった。簡素ないい小屋になったが、いかんせん、すきま風が…
世話になる農家で、野良着の婆ちゃんが毎日働いている。土日休みや定年退職ような企業概念はなく、働くことは生きることと同義であるように見える。働くことは当たり前、働くことが生きること。無論、そこに顔を歪めたくなるような奴隷的…
栄養価は同じ野菜でも、盗んだ野菜を罪悪感を抱きながら食べるのと、親切におすそわけしてもらった野菜を気持ちよく食べるのとでは、肉体が吸収するエネルギーにも、質的な違いが生じそうである。 高級な料理は間違いなく美味であるが、…
秋の風がさらさら音を立てて、稲穂の上を流れていく。綿の野良着にわら帽子を被った婆ちゃんが、ちいさなちいさな腰を曲げて、手鎌で稲穂を刈り取っている。もし今日、現存する日本人の美しい姿を挙げるとしたら、婆ちゃんが田畑で働く姿…
大切なことだから、何度も書こう。私は授かった恩を返すことのほかに、生きんとする意志を燃やすすべを知らない。自分をたいせつにするだとか、自分のために生きるだとか、優しそうな言葉を鵜呑みにしたとき、色んな関係が不義理に沈み、…
嵐が去り、秋の風が吹き始めた。夏のひと仕事を終えた人間を労う慰安の季節だ。もしくは、街の喧噪から旅人を誘い出し、文化に親しみを抱かせてくれる、哀愁の季節でもある。寒さに思わず身を縮めてしまう早朝の空気は霊妙さを帯びはじめ…
「ご両親は何も言わないのですか」と聞かれると、とても不快な気持ちになる。森の中で風変りに生きていると、出会う人間によくこの質問を受ける。第一に「お前の両親は道徳観の欠けた無責任な人間なのか」と言われているようで、とても悲…