記憶をたどり古傷を想い…[707/1000]
崇高を噛みしめた空の 清澄に手を伸ばす 戦士の記憶を辿り 古傷を想い 名を捨て 故郷を捨て 世を捨てた この身の淪落と、眠りと麻薬に溺れる日々は どうしても救いようがない 同情の値打ちもない憔悴の果て こぼれる光と涙に …
崇高を噛みしめた空の 清澄に手を伸ばす 戦士の記憶を辿り 古傷を想い 名を捨て 故郷を捨て 世を捨てた この身の淪落と、眠りと麻薬に溺れる日々は どうしても救いようがない 同情の値打ちもない憔悴の果て こぼれる光と涙に …
身体の深くに、病気の根、無力の根、絶望の根を張り巡らし、無為に耐えかねよく働き、悲哀に潰され幸福に寄る。追っても追っても届かぬ永遠、楽園はここになければどこにある。困窮は欲望を生み、欲望は気分を満たした。この世で眠りつづ…
社会を憂うも日常に焦がれ 空身の亡霊に耐えかねて この世の家に夢をみる 愛する妻、我が友の 未来から垂らされた記憶は 寂しい隠者の独り言 意志よ お前は情熱に飢えている お前はただ、混沌を劈き その返り血を浴びていたいだ…
科学の足は遅すぎる。祈願は疾駆し、光は轟き、……それも俺には解っている。あんまりたわいがない、暑苦しい。 ランボオ「地獄の季節」 進歩に楯突き、無為の手に堕ちたとはいえ、森に拾われたのは唯一の救いであった。自然には地水火…
この精神の乱脈も、所詮は神聖なものと俺は合点した。耐え難い熱に憑かれて無為の日を過ごしては、俺は獣物らの至福を羨んだ、―穢れをしらぬ土竜の睡りや、幽界の無垢にも似た青虫を。 ランボオ「地獄の季節」 倦んだ身体を故郷へ運ぶ…
明るい休息だ、熱もなく、疲れもなく、寝台の上に、草原の上に。 友は、烈しくもなく、弱くもなく。友よ。 愛人は苦しめもせず、苦しめられもせず愛人よ。 尋ね歩く仔細もない空気とこの世と。生活。 ―では、やっぱりこれだったのか…
この世の未練、土への渇望、少年の夢、生に息づくあらゆるものが欠けていく。何も食わぬ日はつづく。だが餓死したところで、無為な日々よりましであろう。死も黙らせた武士の気概を、口にするのも怖ろしい。食えねば餓死、食わねば精進。…
見飽きた。夢は、どんな風にでも在る。 持ち飽きた。明けても暮れても、いつみても、街々の喧騒だ。 知り飽きた。差し押さえをくらった命。―ああ、『たわ言』と『まぼろし』の群れ。 出発だ、新しい情と響きとへ。 ランボオ「飾画」…
前世紀には俺は誰だったか。今在る俺が見えるだけだ。もはや放浪もなくなった。あてどのない戦もなくなった。劣等人種はすべてを覆った。―いわゆる民衆を、理性を、国家を、科学を。 ランボオ「地獄の季節」 風はいつも涙を誘い、罪の…
ああ、妾は苦しい、妾はわめきます、妾はほんとに苦しいのです。でも、世間で一番さもしい人達の侮蔑を、背負い切れぬほど背負ったこの妾に、もう何もこわがる事はない筈です。 ランボオ「地獄の季節」 生きる苦労は涙に還り、いつかは…