動物たちは、美しいまま、すなおに泣けばいいことを教えてくれる。[772/1000]

君たちがせめて動物として完全であったなら!もっとも、動物なら無邪気さをそなえているはずだが。

君たちの官能を殺せ、と私は君たちに勧めるだろうか。私が君たちに勧めるのは、官能の無邪気さのほうである。

ニーチェ「ツァラトゥストラはこう言った」

 

森で暮らしていると、動物によく出会う。ついこないだ、茶色い野兎とリスがやってきて、昨夕は、通りすがりのイタチと目が合った。今朝は、羽を怪我したスズメが、苔の生えた倒木で休んでいた。皆、目が合うと驚いて逃げてゆく。その光景はなんとも健気だ。文明が洗練されてゆくほど、俺たちは動物の無邪気さをなくしていく。悲しみも怒りも怖れも、そのはじまりはどれも美しい。洗練されすぎると、変にこじれる。身体に悪い食べ物を貪ったり、うさんくさい宗教に囚われる。胡散臭い動物はいない。動物たちは、美しいまま、すなおに泣けばいいことを教えてくれる。そのための力と、そのための無邪気だ。素朴な暮らしに憧れる生命を、洗練された欲望から救い出すための、素朴に泣ける慣習だ。

 

2024.7.30

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