環境という大きな人格[595/1000]
私が都会に抱いた初めての印象は、人に対する関心のないことであった。おびただしい人の数が、街の通りを歩いている。中にはティッシュを配ったり、病気の我が子のために看板を自作して募金に励む人もいる。マイクを口に当てて政治活動を…
私が都会に抱いた初めての印象は、人に対する関心のないことであった。おびただしい人の数が、街の通りを歩いている。中にはティッシュを配ったり、病気の我が子のために看板を自作して募金に励む人もいる。マイクを口に当てて政治活動を…
生きることは夢のようなものだという。夢とは、神が時空に零す記憶の涙である。空の遥か彼方からやってきて、風のように知らぬ地へ去っていくものである。少年期の冒険も、青年期の野望も、壮年期の苦悶も、老年期の叡智も、すべて優しい…
世間の目は騙せても、己の目は誤魔化せない。己の聡明な目だけが、己のうちに存在する神を知る。ゆえに、神を忘れるために馬鹿になる。己を欺くことに対する罪悪とは、自分のために生じるものではない。神を欺いていると自覚するから、罪…
勝者の論理を正義というのではなく、古くへと立ち返ることを正義と言えないだろうか。肉体に例えるならば末梢神経と戯れることではなく、心へと立ち返ることだ。男女の交合に例えれば、心の合一となるものが前者であり、末端の感覚器官の…
沢木耕太郎さんの「深夜特急」全6巻を読み終えた。凡庸な終わり方を想像していた私は度肝を抜かれ、思わず声を漏らしてしまった。 インドのデリーから最終目的地であるロンドンまで、1年以上かけてバスで旅するうちに、…
それにしても、旅人の相手をしてくれるのは老人と子供だけだな、とベンチに坐ったまま私は思った。観光客を相手の商売をしている人たちを除けば、いつでも、どこでも、私たち旅人の相手をしてくれるのは老人と子供なのだ。しかし、それを…
歴史上、政治とは要するに、パンを与えるいろんな方策だったが、宗教家にまさる政治家の知恵は、人間はパンだけで生きるものだという認識だった。この認識は甚だ基調で、どんなに宗教家たちが喚き立てようと、人間はこの生物学的認識の上…
人間を無力にするものは何だろう。”what makes humans impotent”のwhatとは何だろう。 「神の老衰」だろうか?私は人間がつくられた哲学を、神が自身を感じるものだと考えてい…
誕生日を祝う慣習は日本にはなかった。戦前、厳密には1949年までは「数え年」であったため、正月に皆がいっせいに歳を重ねたのだ。1949年以降も、しばらくは、以前の慣習を継承し、個人の誕生日を祝うことはなかった。気になって…
2024年1月27日。今日で「俺」は人間を30年やっていることになるらしい。 「らしい」と書くのは、時間感覚が当てにならないからである。「俺」とあえてカッコ書きにするのも、より大きな存在に成りきるためである。30年前、無…